すてきな小道具、インテリア。アメリカじんは昼間っからウィスキー飲みまくり

刑事コロンボ』が優れたテレビ映画となった、重要な要素。それは、画面じゅうにビッチリ敷き詰められている、すてきなすてきな、小道具たちであります。

あたしは映画で描写される、インテリアやファッション、雑貨などを、ヒッジョーに注視するタチでしてね。そいで、コロンボシリーズは、アメリカの風俗、世相を、それはそれは丁寧に映像化してましてね。毎回、小道具を見るのも、楽しみで仕方がないンですよ。

毎回の主人公=犯人さんは、皆さんお金持ちなので、毎度毎度、ロサンゼルスの豪邸が出てくるんですよ。皆さんいい家にお住まいで。こんどの犯人さんや被害者さんの、おうちのインテリアは、どんなかな〜?

今まで見た中で、あたしが一番好きなインテリアは、4話「指輪の爪あと」の犯人、ブリマーさんちです。

すっごく、モダンなの。華美なインテリアが多いシリーズ中、ブリマーさんちは、機能美追求なの。真っ白な装飾のない壁紙に、デザイナーズブランドの家具が、無駄なスペースなく置かれています。ファブリックは、オレンジ色にダークグリーンと、極めてシック。壁にかけてある絵画も、前衛ばかりでカッコいいの!「うぉ、この人は、インテリアの趣味がいい!」と、うなったよ。ブリマーさんは、インテリアの趣味のよさで、マイベスト犯人です。

インテリアの趣味で、マイワースト犯人は、63話「4時02分の銃声」チェイスさんち。

アルハンブラ宮殿風の外観も、庭にあるゴンドラの線路が丸出しなのも、室内に無意味に段差がありすぎるのも、娘さんの部屋へエレベーターからダイレクトに入れてしまう構造も、ワークスペース動線の狭さも、チェイスさんて、なにもかもが悪趣味なんだよな…チェイスさんの家、たぶん実在の邸宅だと思います。ホントに住んでるかた、すみません(汗)

さて、そこで。毎度、目につく小道具が、あります。犯人さんの居間や、庭園のプールサイドなどには、たいてい、ガラス製のデキャンタに入った、茶色い液体があることです。デキャンタのそばには、グラス類がいっぱい並んでて、コロンボが訪ねてくると、犯人さんは、

「警部さん、おひとついかがですか。」

とかゆって、茶色い液体を、グラスに数センチ注いで、すすめるのね。このシーンが、しょっちゅう、あるんですよ。コロンボは、

「いま勤務中ですからぁ〜」

とお断りすることもあれば、クイクイ飲んじゃってることも、あります。

あの茶色い液体は、なんだろうかしらと。麦茶のはずはないので。当然、ウィスキーです。どいつもこいつも、昼間っから飲んでます。犯人さんのウィスキーの飲み方が、犯行への手がかりを、コロンボに示唆した回も、ありました。14話「偶像のレクイエム」です。

そいであたしはね、下戸なんですがね。コロンボのビデオを見てね。あ、また犯人さんたち、ウィスキー飲んでるぅってね。影響受けちゃってね。グラスにバーボンを、少ぅしだけ注いで、今宵の名犯人と、コロンボに、乾杯!

おともだちになりたくない犯人さん、新刑事コロンボ編。名犯人登場!

『新刑事コロンボ』こと、46話以降の中で。実際に、本当に、リアルでこいつに出会ったら、絶対に、おともだちにはなりたくないと思う犯人さん、ベスト3!

1位:ジャスティン(56話「殺人講義」
2位:チェイスさん(63話「4時02分の銃声」
3位:ブレークさん(46話「汚れた超能力」

1位:「殺人講義」は、主人公=犯人への嫌悪感を、故意にあおり、コロンボの精神美を、際立たせようという狙いが、大成功している作品。だから「殺人講義」は傑作であり、と同時に、主人公ジャスティンへの嫌悪感は、ただ事でなくなるのでした。

「4時02分の銃声」の犯人チェイスさんを下回る、ひととして大嫌いな犯人は出ないと思ってたのに…「殺人講義」のジャスティンへの、あたしのムカつきは、我ながらすごかったよ。怒りのあまり、テレビモニタ、割りそうになったよ。おまえが死ねばいいのにナムバーワンよ。被害者の教授先生が、かわいそうすぎる。こんなアホに、逆恨みされて、ゲーム感覚で殺されて…お、おのれジャスティン、許せんぞ。仏罰くらわっしゃい!

ちなみに、ジャスティンの共犯者、クープについてはどうかというと。罪の重さと、普段の生活態度では、ジャスティン同様に嫌いだけども、クチのききかたが、クープはまだおとなしい。ジャスティンは最後の最後まで、クチが減らない!キュー、ムカつく!あとジャスティンは、顔が気に食わない。トロンとした目つきが、イヤー!

2位:チェイスさんについてはこちら

3位:ブレークさんはね、根がアホタリなのよね。あたしは、ブレークさんの、もろモデルであるユリ・ゲラー含め、自称超能力者という分野自体が、そもそも好きではないんだわね。

そいでブレークさんは、自称超能力者のくせに、現実の未来を見通せないのね。おとなしく超能力研究所の経営続けておれば、貯金もできて、楽に暮らせただろうに。仕事上のパートナーでもある彼女を捨てて、CIAに就職しようとするなんて、もうアホかと、バカかと。手品でCIAの面接をだますなんて。実際の仕事場に行ったら、すぐにボロが出るに決まってるじゃないか。この行為は、彼女とCIAと、両方の信頼を、裏切ってるってことじゃないか。手品師だろうと超能力者だろうと、仕事である限り、いっとう大事なのは信頼関係なのに、ブレークさんは、周囲のみんなを裏切っているんだもの。アホな上に薄情で、始末に終えないわ。

あれ?ブレークさんって、ひょとしたら天然ボケなのか?自分の超能力は、実は種明かしのある手品だということを、自覚しながら、忘れたいようなフシがあるね。表情が、能面みたいなのも、気持ち悪い。残酷な手口でコロシといて、死体を直視する勇気はないという、中途半端さもイヤ。

ジャスティンもチェイスさんも、ブレークさんも、こうした嫌悪感を、強く感じさせるだけ、演技者として優れているわけです。

コロンボシリーズには、視聴者もコロンボも、犯人さんのことを、大好きになってしまう回が、多くあります。19話「別れのワイン」や、62話「恋におちたコロンボ」の犯人さんを、あたしは大好き。一方で、犯人さんの行いに、視聴者が反感を持つように持つように、意図して書き上げられている回もあるのね。

ジャスティンたち、おともだちになりたくない犯人像は、脚本が意図したテーマの成功例なのであり、名犯人と呼ぶにふさわしいと思います。

47話「狂ったシナリオ」(ビデオ版「予期せぬシナリオ」)MURDER,SMOKE AND SHADOWS

米国初放送:1989.2.27
NTV初放送:1993.6.4
ピーター・フォークの年齢:61歳
ゲストスター:フィッシャー・スティーヴンス(役名:アレックス・ブレイディさん。ユニバーサルスタジオの売れっ子特撮監督。声:池田秀一
いきなり音楽が、軽快にして美しい。ユニバーサル・スタジオが犯行の舞台か。今回の主人公=犯人登場の、颯爽としたさまに、ワクワクする。犯人ブレイディさんは、20代とおぼしき若者で、才気あふれる特撮監督だ。金髪のボブヘアに、青いネルシャツとジーンズがよく似合う。メガネの奥はけっこうな美形。見目、さわやかな男の子だぞ。そして実に人間的だ。犯行の動機は身勝手そのもの、手口は自分に酔っている。物語開始から、殺人の実行まで、グイグイ惹きこまれる。これはひとえに、主人公ブレイディさんの力量による。ひととしては、いやなやつ。だけど、魅力的な犯人なんだ。こんな『新・刑事コロンボ』が、見たかった!
ブレイディさんを演じている俳優、フィッシャー・スティーヴンスを、あたしは本作で初めて見たが、力のあるひとだなあと感心した。劇中の役どころ、ハタチ代で才能を認められた、生意気な映画監督という役柄にピッタシの、個性的な顔立ちの青年だ。老刑事コロンボのフォークと、対決するにふさわしいパワーがあるねえ。やるねえ。彼が、ひとりで画面を飛び跳ねているだけで、絵になるんだよ。ピーターパンみたいに。
あたしはビデオの字幕スーパーでしか見ていないが、ブレイディさんの声が、テレビ版では池田秀一さんですと!ななな、なんですとー!吹替え版、見たーい!池田秀一さんは、ガンダムのシャアでおなじみだが、洋画吹替えでも、あたしにはおなじみ。かつて、日曜洋画劇場で『プラトーン』を放送したさい(ガンダム後、淀川長治さん存命時です)、主人公チャーリー・シーン役が池田さんで、イメージピッタシで感動したことを思い出すなあ。
なにしろ主人公=犯人のキャラクターが立ってるので、ストーリーもわかりやすい。増長していたブレイディさんが、飄々としたコロンボの詰め寄りに、だんだんイライラしていく様子がヨイ。ブレイディさんの犯行は、数時間で考え出した計画だったため、随所に見落としがある。それをコロンボは、ひとつひとつ拾い上げ、「あの〜、こんな証拠が出たんですよ〜、ブレイディさん〜」と例の調子で言うんだな。
原語でコロンボは、「ミスタ・ブレイディ、サー!」と呼びかけていることにも興味を持った。まだ若僧だけども、職業が映画監督で、地位のあるひとだから、英語的に敬語になるんかしらね。ブレイディさんとたいして年齢の変わらない、56話「殺人講義」の犯人めらには、ファーストネーム呼び捨てだったが、きゃつらは学生の身分で、客員教授コロンボの教え子の立場だから、ファーストネーム呼び捨てで納得する。英語に明るくないあたしにとって、字幕版は、プチ勉強になって楽しいヨ。でもこれの、石田コロンボ、池田ブレイディは、見たい。ぜひ見たい。
とにかく「狂ったシナリオ」は、噂にたがわず、秀作だった。ラストシーンへのたたみかけ。追い詰められたブレイディさんが、苦しまぎれに作り出した、コロンボへの罠。とうにお見通しのコロンボから、ブレイディさんへの罠。ただコロンボの罠は、ちょっち説明不足な感が、なきにしもあらず。あたしは「え?」とわからなくなり、ビデオを止めて、見直した。うーん、どうだろう。わかりやすくてイイなと思ってた本作の、最後にきて、わかりにくいのは、惜しかったかも。しかし、全体の尺をかんがみるに、コロンボの罠の意味づけは、はしょってもエエやないかとも思うな。コロンボのことだから、早い段階でブレイディさんの計画を見抜いて、彼の秘書や恋人を、味方に取り込んでいたんだろうね。早い段階とは、どのあたりだったかな?と、後から考えるのも、コロンボシリーズらしいといえば、らしいもの。
「スクリーン上の犯行」というテーマを、徹頭徹尾、貫いている脚本とカメラワーク、演出がグーですよ。ブレイディさん主人公のお話しとして結実してる本作、お気に入りです。
Super!dramaTVの放送予定表、7月分が更新されている のを見たら、なんと、新シリーズを最初からリピート放送するとある!46話「汚れた超能力」から順番に、また放送してくれるだなんて!7月中に、この47話を、池田ブレイディを見られるんだよワーイ!むさくさ嬉しい!スパドラさん、ありがとう(号泣)

46話「汚れた超能力」(ビデオ版「超魔術への招待」)COLUMBO GOES TO THE QUILLOTINE

米国初放送:1989.2.6
NTV初放送:1993.5.7
ピーター・フォークの年齢:61歳
ゲストスター:アンソニー・アンドリュース(役名:エリオット・ブレークさん。超能力者。声:野沢那智

遅まきながら、2007年の5月に、ケーブルテレビの放送で『刑事コロンボ』にコロんだ筆者。これまでにテレビで見た回は、新シリーズでは、第60話「初夜に消えた花嫁」以降のみ。そいであたしは、DVDが販売されている、第1〜45話ならば、そのうち見る機会もあろうが、DVD化されていない新シリーズこと『新・刑事コロンボ』の、46〜59話は、当面、見ることは出来ないと思い込んでいた。ネット上で、新シリーズの47話「狂ったシナリオ」や、56話「殺人講義」は傑作だという評判を読んで、

あ゛ー、見たい見たいよー!あたしゃ新シリーズの、老齢フォークの方が男としては好みなのにア゛ァーッ!

と、ひとりでわめき散らしていたのだった。

ところが…おお、そうだ。レンタルビデオ店という文明の利器があったことを、思い出したぞ!かしこいぞ、あたし!

そんなわけで、激近所のレンタル屋さんで、4タイトルのVHS版をみつけ、狂喜乱舞し、借りてきた次第。46話「汚れた超能力」、47話「狂ったシナリオ」、48話「幻の娼婦」、そして、あらすじを資料本で読み、もっとも見たかった56話「殺人講義」をゲェエットォ!

ただ、残念なことに、これらVHS版は、字幕スーパーなのである。皆さんご存知の通り、『刑事コロンボ』というテレビ映画は、「ウチのカミさんがね〜」の名翻訳と、小池朝雄さんの、男の色気にあふれる名演技によって、日本でも人気を博したのだ。もしも日本で、最初から字幕でのみ放送されたならば、こんなにまで人気は出なかっただろう…とは、世間でよく言われる批評だ。

んで、じっさい、字幕版を見て、あたしも、コロンボってぇのは、吹替えでこそ、いや増す魅力があるのだなあ、と思い知った。あたしね、小池朝雄さんは、もちろん、ああもちろん大好きなんだけど、石田太郎さんのコロンボが、特に好きなのよ。40代の、セクシーなおにいさんフォークには小池さんが、60代の、好々爺なフォークには、石田さんが合ってると思ってる。小池朝雄さんご存命ならば…と、悲しく思うことはあれども…あたしだって、小池朝雄さんのことは、アニメ『長靴をはいた猫』の魔王役からずっと大ファンなんだい…ぐすん。字幕で見ながら、これの吹替えを見たいなあと、強く思ったよ。

反面、当然ながら、原語でしか味わえない良さも、たくさん感じたよ。まずピーター・フォークの、声が高いのにビックリ。小池・石田の雰囲気と、ぜんぜんちゃうがな。

「ウチのカミさんがね〜」は、原語では、「マイ・ワイフ…」のときと、「ミセス・コロンボ…」のときがあることを発見。

事件関係者が吹替えで、「おおい、コロンボ刑事ぃ〜!」とか、「ねえ、警部さん。」と呼びかける場合、原語では、「ルテナント・コロンボ!」(=コロンボ警部補)とか、「ヘーイ、ルッテナントォ〜ッ!」と、言ってることもわかった。

さて、「汚れた超能力」の感想だが。殺人が実行されるまでが、長い。なんがい。93分間の作中で、開始からコロスまで、25分もかかってる。これを長げーと感じた。

倒叙スタイルであるコロンボシリーズにおいて、毎回の主人公は、コロンボくんではない。犯人だ。で、見てるあたしは、毎回、主人公である犯人を、好きになりたい。殺人を犯すことになっても、ひととして同情できると、あたしは犯人が好きになる。

62話「恋におちたコロンボ」の犯人ステイトンさんしかり。ステイトンさんの犯行の動機には、おおいに情状酌量したいし、彼女は、我らがコロンボに恋をしてしまうという、シンパシー200パーセントな女性だから。

また、残虐な犯人像で、感情移入はできなくても、役者として存在感があると、これまた好きになる。63話「4時02分の銃声」 の犯人チェイスさんは、人格的にはヘドが出るほど大嫌いだが、演じたウィリアム・シャトナーは、俳優として見直すほど好演だった。長尺番組の主人公として、コロンボの敵として、申し分のない犯人チェイスさんも、あたしは「好き」になったわけだ。

そういう観点でいうと、「汚れた超能力」の犯人ブレークさんは、アホで、性格悪くて、表情が薄い。好きには、なれなかったなあ…。

極めて非人間的な犯人像を描き出した、という意味では成功しているかな。でもなあ、犯行のトリックが、手品の種明かしだなんて、こんなん、コロンボでなくてもわかるやろ。犯人ブレークさんの人間関係も、うすっぺらだ。ブレークさんがカノジョを捨てるシーンで、あたしはカノジョには同情したかった、が、いまいち。カノジョよ、こんなアホには、もっと早く見切りをつけろよ…。CIAのひとも、こんなん採用するなよ。見抜けよ、手品だってことに…。

よかった点も、いっぱいあるよ。コロンボ登場のシーンさ!番組的に、10年ぶりの刑事コロンボ再来シーンだから、演出に気が入ってる。重々しすぎず、さりげなさすぎず。深夜の街路にプジョー。まっくらな運転席で、ボッとともされる、葉巻の火。炎に照らしだされる、61歳のコロンボ…ヒャー、かっくいいこと!番組終盤(65話ぐらい以降)、フォークが60代後半になると、さすがの老け専のあたしも、ちょっと、老けすぎカナ…と思うんだけど、61歳の頃は、サイコーに好みだ。

ブレークさんについて、つづき。おともだちになりたくない犯人さん

スパドラさんで、吹替え版、見ました!

ブレークさんの声が演技が、野沢那智さんになったとたん、うさんくささ、尊大さ、増大!一躍、存在感のある、クセモノキャラになりました。野沢さんのいっちゃてる演技で、ブレークさんの人となりが、より深く、理解できた気がします。やはり天然ちゃんなんだナーと。

刑事コロンボの第1話である「汚れた超能力」は、石田太郎さんのコロンボ初登場です。なんて感動的な。石田さんは、初代コロンボ小池朝雄さんのイメージを損なわないよう、ソックリに、ときに、石田太郎らしさを打ち出して、演じておられた。翻訳台本もさすがのいい出来だったし、やっぱコロンボは吹替えに限るね。

65話「奇妙な助っ人」STRANGE BEDFELLOWS

米国初放送:1995.5.8
NTV初放送:2000.3.31
ピーター・フォークの年齢:67歳
ゲストスター:ジョージ・ウェント(役名:グレアム・マクベインさん。競馬ウマを育てる牧場の経営者。声:樋浦勉)、ロッド・スタイガー(役名:フォテーリさん。マフィアのドン。声:内田稔
ジョージ・ウェント演ずる今回の犯人、マクベインさんは、遠くから見てもマクベインさんだとわかる、巨漢。彼の名前なんだが、吹替え版で、コロンボら、他人からの呼び方は「マクヴェイさん。」で、本人が名乗るときのみ、「マクベインだ。」と言ってたのが印象的だ。さらに二見書房刊の小説版『幻のダービー馬』(小鷹信光訳)では、グレアム・マクヴェイになっている。この記事では、筆者の好みで、マクベインさん呼ばわりで統一するとする。
そいであたし、フクヨカな男性って、好みなのよね。マクベインさんは、体型がフクヨカで、あせると額に大汗かいたり、ビビり方が素直だったりと、すごく人間的で、好感が持てるひとだったよ。犯行の手口が素朴、と言うか、ヌカリが多すぎ。変装してバーに入って、トイレにネズミを放すシーンは、笑ってしまったよ。さりげなくやろうと本人、頑張ってるんだけど、必死さが見え見えなんだもの。根っから悪いやつじゃないんだなあと思えてね。マクベインさんは、馬を愛し、牧場を守るために、一生懸命なんだ。身勝手な犯人像が目に付く新シリーズ中、マクベインさんの一生懸命さには、愛すべき点があったと感じたよ。

幻のダービー馬―新・刑事コロンボ (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション)

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18話「毒のある花」LOVELY BUT LETHAL

米国初放送:1973.9.23
NHK総合初放送:1974.9.14
ピーター・フォークの年齢:46歳
ゲストスター:ヴェラ・マイルズ(役名:ヴィヴィカ・スコットさん。化粧品会社社長。声:伊藤幸子)、マーティン・シーン(被害者役。声:伊武雅之。現在の芸名は、伊武雅刀
犯行現場に残された、眉墨で書かれたメモから、コロンボは「このメモを書いたのは、黒い眉墨を使う女だ」と推定。このネタで、コロンボのカミさん情報がひとつ判明しました。コロンボ曰く、カミさんは、眉墨(眉毛を描く化粧道具で、アイブロウペンシルとも呼ぶ。)を、鉛筆代わりにするとのこと。
それを聞いた、化粧品会社の社長で、今回の犯人ヴィヴィカさん(ヴェラ・マイルズ)は、赤毛だったのです。ヴィヴィカさんは、自分のなら、アイブロウペンシルは赤毛用で、黒くはないのよと。黒いアイブロウを使う女性は、ブルネット(暗褐色の頭髪のこと)のはずだと言いました。つまりコロンボのカミさんの髪は、暗褐色だと、判明したわけです。
コロンボが語る「身内の話し」は、どこまでが本当なのか、わからないのがミソなんだが、眉墨の件にかんしては、事実を言っていたね。なんでかというと、中途半端に正確だったからよ。リアリティがあんの。男性は、女の化粧にはうとい。カミさんの愛用化粧品を、イヤでも見てきたコロンボには、銘柄などの化粧品知識はあったけども、じっさい使ってる女性じゃないから、眉墨ってものはみんな、鉛筆みたいに黒いもんだと思ってた。それは違うぜよ、赤い眉墨なら日本にもあるぜよと、ヴィヴィカさんでなくって、あたしでも突っ込み入れたもんね。
だから、眉墨にかんするヴィヴィカさんとのやり取りは、彼の家庭生活を想像する上で、非常にリアルな会話だったといえます。「ウチのカミさん」の髪の色は、ブルネットです。ハイこれは判明!

17話「二つの顔」DOUBLE SHOCK

米国初放送:1973.3.25
NHK総合初放送:1974.7.20
ピーター・フォークの年齢:45歳
ゲストスター:マーティン・ランドー(役名:デクスターさん。料理研究家。声:滝田裕介)
今回のみどころは、料理研究家で、テレビの料理番組を持っている犯人デクスターさん(ランドー)と、コロンボが、料理ショーをやっちゃう場面でしょう!画面に突っ込みまくりですよ奥さん。このシーンには台本はなく、マーティン・ランドーピーター・フォークの二人が、ぶっつけ本番でやっちゃったんだって。こいつら男二人が、作った料理がすごいのだ。なにがって。アメリカじんちゅうのは、こんなクソ簡単な料理、番組で教わらないと作れんのかぃ?卵の黄身と、フライパンで溶かしたバターと、レモンじると、塩、こしょう。これらをミキサーで混ぜて、ゆでたパスタにかけるだけ。ま〜ぜ〜た〜だ〜け〜。「二つの顔」を、あたしと一緒に見ていたママ曰く、
「あんなもん、ミキサー使うまでもないがな」
でも、ピーター・フォークの「卵の扱い方」を見れば、彼が料理慣れしていることは確かで、フォーク萌えなあたしとママ、その点は大喜び。
こんなあたしとママが、画面に突っ込みまくったシーンがもうひとつ。被害者宅で検分中、くわえタバコを注意されたコロンボが、その家のバスルームに入る。
私「靴、はいたまんまやん…」
母「いやあねえ、お風呂場に、泥靴のままあがるなんて」
私「あっちの習慣なんやなあ」
洗面台で、顔を洗おうとしてコロンボ、浴室内の異変に気がつき、しげしげを眺め始めます。と…ところが…浴槽や、洗濯物入れや、犯行に関係ありそうなものに気をとられている間、コロンボ、洗面台の水、出しっぱなし!突っ込むあたしと母!
母「蛇口、蛇口!出しっぱなしやがねあのひと」
私「コロンボ、水道をしめなさい」
ダーダー水が出ている洗面台は放置で、他ごとやってるコロンボ
私「すいどう。みず!水道を、しめなさい。コロンボ、水…もったいないやろ!」
母「あー、ようやく、水とめたわ」
私「どんだけ出しっぱなしじゃ」
刑事コロンボ』に限らず、洋画を見ていると、こうした文化の違いを、たびたび垣間見るので、おもしろい。「二つの顔」では、デクスターさんの料理簡単すぎと、コロンボの水道出しっぱなしが、すんげー気になって、楽しめた。こういう、生活観がにじみでる描写、好きだなあ。