47話「狂ったシナリオ」(ビデオ版「予期せぬシナリオ」)MURDER,SMOKE AND SHADOWS

米国初放送:1989.2.27
NTV初放送:1993.6.4
ピーター・フォークの年齢:61歳
ゲストスター:フィッシャー・スティーヴンス(役名:アレックス・ブレイディさん。ユニバーサルスタジオの売れっ子特撮監督。声:池田秀一
いきなり音楽が、軽快にして美しい。ユニバーサル・スタジオが犯行の舞台か。今回の主人公=犯人登場の、颯爽としたさまに、ワクワクする。犯人ブレイディさんは、20代とおぼしき若者で、才気あふれる特撮監督だ。金髪のボブヘアに、青いネルシャツとジーンズがよく似合う。メガネの奥はけっこうな美形。見目、さわやかな男の子だぞ。そして実に人間的だ。犯行の動機は身勝手そのもの、手口は自分に酔っている。物語開始から、殺人の実行まで、グイグイ惹きこまれる。これはひとえに、主人公ブレイディさんの力量による。ひととしては、いやなやつ。だけど、魅力的な犯人なんだ。こんな『新・刑事コロンボ』が、見たかった!
ブレイディさんを演じている俳優、フィッシャー・スティーヴンスを、あたしは本作で初めて見たが、力のあるひとだなあと感心した。劇中の役どころ、ハタチ代で才能を認められた、生意気な映画監督という役柄にピッタシの、個性的な顔立ちの青年だ。老刑事コロンボのフォークと、対決するにふさわしいパワーがあるねえ。やるねえ。彼が、ひとりで画面を飛び跳ねているだけで、絵になるんだよ。ピーターパンみたいに。
あたしはビデオの字幕スーパーでしか見ていないが、ブレイディさんの声が、テレビ版では池田秀一さんですと!ななな、なんですとー!吹替え版、見たーい!池田秀一さんは、ガンダムのシャアでおなじみだが、洋画吹替えでも、あたしにはおなじみ。かつて、日曜洋画劇場で『プラトーン』を放送したさい(ガンダム後、淀川長治さん存命時です)、主人公チャーリー・シーン役が池田さんで、イメージピッタシで感動したことを思い出すなあ。
なにしろ主人公=犯人のキャラクターが立ってるので、ストーリーもわかりやすい。増長していたブレイディさんが、飄々としたコロンボの詰め寄りに、だんだんイライラしていく様子がヨイ。ブレイディさんの犯行は、数時間で考え出した計画だったため、随所に見落としがある。それをコロンボは、ひとつひとつ拾い上げ、「あの〜、こんな証拠が出たんですよ〜、ブレイディさん〜」と例の調子で言うんだな。
原語でコロンボは、「ミスタ・ブレイディ、サー!」と呼びかけていることにも興味を持った。まだ若僧だけども、職業が映画監督で、地位のあるひとだから、英語的に敬語になるんかしらね。ブレイディさんとたいして年齢の変わらない、56話「殺人講義」の犯人めらには、ファーストネーム呼び捨てだったが、きゃつらは学生の身分で、客員教授コロンボの教え子の立場だから、ファーストネーム呼び捨てで納得する。英語に明るくないあたしにとって、字幕版は、プチ勉強になって楽しいヨ。でもこれの、石田コロンボ、池田ブレイディは、見たい。ぜひ見たい。
とにかく「狂ったシナリオ」は、噂にたがわず、秀作だった。ラストシーンへのたたみかけ。追い詰められたブレイディさんが、苦しまぎれに作り出した、コロンボへの罠。とうにお見通しのコロンボから、ブレイディさんへの罠。ただコロンボの罠は、ちょっち説明不足な感が、なきにしもあらず。あたしは「え?」とわからなくなり、ビデオを止めて、見直した。うーん、どうだろう。わかりやすくてイイなと思ってた本作の、最後にきて、わかりにくいのは、惜しかったかも。しかし、全体の尺をかんがみるに、コロンボの罠の意味づけは、はしょってもエエやないかとも思うな。コロンボのことだから、早い段階でブレイディさんの計画を見抜いて、彼の秘書や恋人を、味方に取り込んでいたんだろうね。早い段階とは、どのあたりだったかな?と、後から考えるのも、コロンボシリーズらしいといえば、らしいもの。
「スクリーン上の犯行」というテーマを、徹頭徹尾、貫いている脚本とカメラワーク、演出がグーですよ。ブレイディさん主人公のお話しとして結実してる本作、お気に入りです。
Super!dramaTVの放送予定表、7月分が更新されている のを見たら、なんと、新シリーズを最初からリピート放送するとある!46話「汚れた超能力」から順番に、また放送してくれるだなんて!7月中に、この47話を、池田ブレイディを見られるんだよワーイ!むさくさ嬉しい!スパドラさん、ありがとう(号泣)