46話「汚れた超能力」(ビデオ版「超魔術への招待」)COLUMBO GOES TO THE QUILLOTINE

米国初放送:1989.2.6
NTV初放送:1993.5.7
ピーター・フォークの年齢:61歳
ゲストスター:アンソニー・アンドリュース(役名:エリオット・ブレークさん。超能力者。声:野沢那智

遅まきながら、2007年の5月に、ケーブルテレビの放送で『刑事コロンボ』にコロんだ筆者。これまでにテレビで見た回は、新シリーズでは、第60話「初夜に消えた花嫁」以降のみ。そいであたしは、DVDが販売されている、第1〜45話ならば、そのうち見る機会もあろうが、DVD化されていない新シリーズこと『新・刑事コロンボ』の、46〜59話は、当面、見ることは出来ないと思い込んでいた。ネット上で、新シリーズの47話「狂ったシナリオ」や、56話「殺人講義」は傑作だという評判を読んで、

あ゛ー、見たい見たいよー!あたしゃ新シリーズの、老齢フォークの方が男としては好みなのにア゛ァーッ!

と、ひとりでわめき散らしていたのだった。

ところが…おお、そうだ。レンタルビデオ店という文明の利器があったことを、思い出したぞ!かしこいぞ、あたし!

そんなわけで、激近所のレンタル屋さんで、4タイトルのVHS版をみつけ、狂喜乱舞し、借りてきた次第。46話「汚れた超能力」、47話「狂ったシナリオ」、48話「幻の娼婦」、そして、あらすじを資料本で読み、もっとも見たかった56話「殺人講義」をゲェエットォ!

ただ、残念なことに、これらVHS版は、字幕スーパーなのである。皆さんご存知の通り、『刑事コロンボ』というテレビ映画は、「ウチのカミさんがね〜」の名翻訳と、小池朝雄さんの、男の色気にあふれる名演技によって、日本でも人気を博したのだ。もしも日本で、最初から字幕でのみ放送されたならば、こんなにまで人気は出なかっただろう…とは、世間でよく言われる批評だ。

んで、じっさい、字幕版を見て、あたしも、コロンボってぇのは、吹替えでこそ、いや増す魅力があるのだなあ、と思い知った。あたしね、小池朝雄さんは、もちろん、ああもちろん大好きなんだけど、石田太郎さんのコロンボが、特に好きなのよ。40代の、セクシーなおにいさんフォークには小池さんが、60代の、好々爺なフォークには、石田さんが合ってると思ってる。小池朝雄さんご存命ならば…と、悲しく思うことはあれども…あたしだって、小池朝雄さんのことは、アニメ『長靴をはいた猫』の魔王役からずっと大ファンなんだい…ぐすん。字幕で見ながら、これの吹替えを見たいなあと、強く思ったよ。

反面、当然ながら、原語でしか味わえない良さも、たくさん感じたよ。まずピーター・フォークの、声が高いのにビックリ。小池・石田の雰囲気と、ぜんぜんちゃうがな。

「ウチのカミさんがね〜」は、原語では、「マイ・ワイフ…」のときと、「ミセス・コロンボ…」のときがあることを発見。

事件関係者が吹替えで、「おおい、コロンボ刑事ぃ〜!」とか、「ねえ、警部さん。」と呼びかける場合、原語では、「ルテナント・コロンボ!」(=コロンボ警部補)とか、「ヘーイ、ルッテナントォ〜ッ!」と、言ってることもわかった。

さて、「汚れた超能力」の感想だが。殺人が実行されるまでが、長い。なんがい。93分間の作中で、開始からコロスまで、25分もかかってる。これを長げーと感じた。

倒叙スタイルであるコロンボシリーズにおいて、毎回の主人公は、コロンボくんではない。犯人だ。で、見てるあたしは、毎回、主人公である犯人を、好きになりたい。殺人を犯すことになっても、ひととして同情できると、あたしは犯人が好きになる。

62話「恋におちたコロンボ」の犯人ステイトンさんしかり。ステイトンさんの犯行の動機には、おおいに情状酌量したいし、彼女は、我らがコロンボに恋をしてしまうという、シンパシー200パーセントな女性だから。

また、残虐な犯人像で、感情移入はできなくても、役者として存在感があると、これまた好きになる。63話「4時02分の銃声」 の犯人チェイスさんは、人格的にはヘドが出るほど大嫌いだが、演じたウィリアム・シャトナーは、俳優として見直すほど好演だった。長尺番組の主人公として、コロンボの敵として、申し分のない犯人チェイスさんも、あたしは「好き」になったわけだ。

そういう観点でいうと、「汚れた超能力」の犯人ブレークさんは、アホで、性格悪くて、表情が薄い。好きには、なれなかったなあ…。

極めて非人間的な犯人像を描き出した、という意味では成功しているかな。でもなあ、犯行のトリックが、手品の種明かしだなんて、こんなん、コロンボでなくてもわかるやろ。犯人ブレークさんの人間関係も、うすっぺらだ。ブレークさんがカノジョを捨てるシーンで、あたしはカノジョには同情したかった、が、いまいち。カノジョよ、こんなアホには、もっと早く見切りをつけろよ…。CIAのひとも、こんなん採用するなよ。見抜けよ、手品だってことに…。

よかった点も、いっぱいあるよ。コロンボ登場のシーンさ!番組的に、10年ぶりの刑事コロンボ再来シーンだから、演出に気が入ってる。重々しすぎず、さりげなさすぎず。深夜の街路にプジョー。まっくらな運転席で、ボッとともされる、葉巻の火。炎に照らしだされる、61歳のコロンボ…ヒャー、かっくいいこと!番組終盤(65話ぐらい以降)、フォークが60代後半になると、さすがの老け専のあたしも、ちょっと、老けすぎカナ…と思うんだけど、61歳の頃は、サイコーに好みだ。

ブレークさんについて、つづき。おともだちになりたくない犯人さん

スパドラさんで、吹替え版、見ました!

ブレークさんの声が演技が、野沢那智さんになったとたん、うさんくささ、尊大さ、増大!一躍、存在感のある、クセモノキャラになりました。野沢さんのいっちゃてる演技で、ブレークさんの人となりが、より深く、理解できた気がします。やはり天然ちゃんなんだナーと。

刑事コロンボの第1話である「汚れた超能力」は、石田太郎さんのコロンボ初登場です。なんて感動的な。石田さんは、初代コロンボ小池朝雄さんのイメージを損なわないよう、ソックリに、ときに、石田太郎らしさを打ち出して、演じておられた。翻訳台本もさすがのいい出来だったし、やっぱコロンボは吹替えに限るね。